2005年08月24日

totuzenn

僕は売切れました。僕は売り切れました。

突然、一人の少年がレンガのモザイク坂駆け下りながら大声で叫んでいました。
そして、少年は広場の中央でこう叫びました。

「僕は本日を持ちまして、売り切れになりました。どうもありがとうございました。つきましては、僕はもう自分の意思で生きることが出来ません。どうか、雇って頂けませんでしょうか。」

人が一人二人集まってきました。

すると再び、

「僕は本日を持ちまして、売り切れになりました。どうもありがとうございました。つきましては、どなたか僕を雇って頂けませんでしょうか。」

気がつくと、広場には大勢の人が集まっていました。

「僕は本日を持ちまして、売り切れました。誰か僕を雇って・・・・・」

人は増える一方であるが、誰一人本気で彼の言葉を聞いてない。
心配そうに見る淑女、物珍しそうに覗き込む子供、遠くのほうでビールを飲みながらつまみにしている農夫たち。ちょっとした大道芸のような雰囲気だった。

ここは穏やかで静かな村で広場にこれだけ人が集まることなど夏のお祭りぐらいなものだ。
 
誰一人彼の呼びかけに真剣に答えるものなど一人もいなかった。

僕はなんて斬新な求人なんだーと少し感心していた。

しかし、こんな村でこんな派手な行動を取るなんて
よほど困っているのだろうか。
でも、少年の顔は困ってるような感じでもなく、何か晴れやかな感じに見えました。

しかし、私には人を雇う余裕などないし、雇う義理もない。
いや、実際は1人ぐらいは雇いたいと思っていたところだし、1,2人雇う余裕はなくもない、何とかなるだろう。
しかし、まったく素性もわからない、一見すると頭のイカレた少年など家に置くのも不安だ。

1時間位してからだろうか、近隣の店のおやじが数人出てきて、その少年の腕を掴み
追い出そうとしていた。

「おい、お前。商売の邪魔になるから出て行ってくれ」
少年は無抵抗のまま無理やり引きずられながら、僕の前を通り、広場から消えていった。

そして、広場はいつもの顔に戻った。

とても、不思議な雰囲気の少年だった。
歳は18歳位だろうかなかなか賢そうな感じの子でとても好感が持てる感じだった。
帰り道、私は彼に対して、色々な空想をしていた。どっから来たのとか家族は何人で何人兄弟の何番目だろうとか、たわいもないことだが。

翌日夕飯の準備に市場に行こうとすると広場にまた、人だかりが出来ていた。
彼だ!!

今日は何も言わず、首から(雇ってください。)という看板をぶら下げ、噴水の前で立ち尽くしていた。

店のおやじに聞いたところ、朝からずっとそこにいるらしい。
人だかりが出来たのは、数分前かららしい。
「確かに何もせずに立ってるだけだから、無視していたけど、この時間に人が流れてくれないと俺たちきついんだよなー」
明らかに店主たちは皆、イライラした感じがする。

そして、しびれを切らせた昨日のおやじがツカツカ歩み寄り、少年の首根っこを掴み、広場から追い出したのであった。

彼はキョトンとした顔でなぜこんなことされなきゃいけないんだ?という顔をしていた。
次の瞬間、少年はおやじに飛び掛りに行った。

それに気づいたおやじは手に持っていた籠で少年の頭をぶん殴った。

少年は2mくらい吹っ飛んで壁に激突した。

気が付くと少年の周りには再び人だかりが出来ていた。
少年も昨日とは異なり、(全てが不安)の様な顔をしていた。

そして、少年は立ち上がり走って去っていった。
その時、一瞬だけだが少年と目があった。彼の目は悲しそうで希望のない眼をしていた。
昨日とはまるで逆の目をしていた。

何故か私は彼の後をついていった。というより家がそっちだったからだが。
しかし、あっという間に見失い、僕は諦め、買物をして、家路につくことにした。

しばらくし、家に帰ってくると家の前に誰かが座っていた。

近づいてみると昼間の少年だった。
8/31
あの広場から家までは4.5里ほどあるだろうに、きっとあのまま走り続けて、一休みのつもりが
疲れきって寝てしまったんだろう。
そーと。彼の横を通り、家に入るそのときであった!!

彼の体は真っ二つに割れ、中からこの世のものとは思えない、オドロおどろしい、悪魔のような
化け物が出てきたのだ。
彼、いやその化け物は口から火を吐き、我が家を炎で覆い尽くした。

申し訳ない、私は以前物書きを目指していて、ついつい、物語を作ってみたくなる性分らしい。
まっみんなは大げさ過ぎるし、こどもっだまし過ぎて読む気にならないと言われたし、
一度出版社に持っていった時などまったく持って、相手にして貰えなかった。
別に本当に物書きになりたかった訳ではないと思う、空想することがとても好きでそれを文章に残しているうちに勝手に本を書いていたのであろう。

私は親の残してくれた土地で農夫を営んでいた。
小さい規模だが、両親、妻、子供を食わすには、十分だった。
3年前、父が他界して、その後を追うように母が倒れた、妻は看病、農作業、家畜の世話、家事。
本当に良くやってくれた。文句一つ言わず、愚痴すら溢さなかった。
私はそれをいい事に行商ついでに街で一杯引っ掛けては夜中まで飲み歩いていた。
それでも妻は文句も言わずやってくれた。見合いで知り合っただけの全くのあかの他人の私に尽くしてくれた。
そして、去年、母が他界した。

ひとつき位経ったある日、珍しく、午前中に全ての品物が完売したので、早々に片付けを済まし、
家路につく事にした。
今日は妻の誕生日だ。
私はケーキとバラの花束23本とバラのネックレスを一つを買い少し道草をしながら、家路についた。
まだ、昼の二時過ぎ、家には誰もいなかった。水を汲む音や子供たちの声がする気がした。
きっと家畜の世話をしているのだろう。
つい、ウトウトしてしまった。

気が付くと辺りは真っ暗だった。

おかしい?この時間には妻は夕飯の支度をしてるだろうに。
起き上がり、明かりを点けて、家中探してみるも家族の気配がしない。

大声で幾ら呼ぼうが返事が返ってこない。
ふと、食堂を見ると夕飯が置いてあった。
あっ、きっとどこか行く予定があったのか?折角ケーキやプレゼントを用意したのに・・・

まっ仕方がない、帰ってきたら、驚かせてやろう。
私は作ってあった、夕飯を頂こうと食堂に向かう。

ふと目をやると、大好きなロールキャベツだ。
「んっ」よく見ると、何かが置いてある。
便箋とノートが置いてあった。


あなたへ

5年間お世話になりました。18でこの家に入り、今まで何も考えず、
考えないように生きてきました。
何度もあなたを愛そうと想いました。もっと愛して欲しくて、一生懸命家族のためがんばってきました。何時頃でしょうか?あなたが私のことをちゃんと見てくれなくなったのは。
何時しか私も上辺だけで付き合ってしまうようになっていました。
あなたはそれすら気づいてくれませんでしたね。
お母様が倒れた頃、私はある決意をしていました。
もしお母様がなくなったら、わたしはここから去ろう、わたしを心から愛してくれている、子供たちとともに去ろうと思いました。


勝手かもしれませんが、許してください。

一緒においてあるノートは、家畜の世話の状態や物の所在、あなたの好きな料理のレシピなど書き綴りました。

誕生日プレゼントありがとう。子供が生まれてから、初めてですね。
でも、もう受け取れません。
お体に気をつけて、がんばってください。

            さようなら

気が付くと私は外に飛び出し、馬に乗り込み一晩中探し続けた。
何も考えられず、頭は真っ白だ。
きっと彼女の事も子供の事も考えていなかったと思う。
きっと今後の自分の事しか考えていなかった。
それからの数日間は、彼女への疑問なぜ?
一体どうして?うまくいっていたはずじゃないか、生活にも何不自由なく、
暮らしていける。
子宝にも恵まれ、一体、何の不満があるというのだ。
 
いやっもう嘘をつくのは辞めよう。
逃げてるだけなんだよ、現実から。
本当は自分でもわかっていたんだ。

止めど無く、涙が溢れてくる。
言い知れない後悔と
何も気づいてあげられなかったこと。そして、本当は何となくそれに気づいていた事。
全てのことから逃げようとしていて事。
そんな風に自分を責めたのはしばらく経ってからだった。

気が付くとそれからもう七年近くも経とうとしている。


そんなことを思い出した夜だった。

風呂に入り、鍋に火をかける。

そう言えば、今日は下のチビの誕生日だ。うっかり忘れるところだった。
もう9才か?早いものだ。

ふと、先ほどの少年のことが気になりだしていた。
何処か下のチビの面影があるからだろうか?

そんな気持ちもあって、つい、出来あがったロールキャベツとパンを脇に、そして毛布をかけてあげた。

「今日は一段と星が綺麗だ。久々に酒でも飲むか。」
そして、私は離れにある納戸にぶどう酒をとりに行き、外でうとうとしながら、飲んでいた。
木の実と星をつまみにしながら。

はっ気がつくと私は深い眠りに入ってしまっていた。

さすがに夏でもこの時間の野宿は答える
彼はどうしただろうか?もうずいぶん経つがまだいるのだろうか?

覗いて見ると少年は完全に地べたに横になって寝ている。

きっと朝までこのままなのだろう、
おや?食べ物は全て食べている。腹が減っていたのだろう。
お節介だと思ったが、お変わりを置いてあげた。

私が家に入ろうとしたとき、当然少年は起き上がりいきなり飯を貪るように食い始めた。
あっと言う間に食べつくし、はぁーっと一息ついたかと思うと、再び、眠りにつきだした。
私は突然おかしくなり、空に届くくらいの声で大笑いをしてしまった。

明日、起きたら少年に話しかけてみよう。

そして次の日、早起きをし、急いで玄関に行ってみる。

するときれいに食べた食器、丸めた毛布だけが置いてあり、彼の姿は何処にもなかった。

9/13
えっ!あれ?わたしは急いで馬を取りにいき、町の方へ向かって走っていった。
なんで、そんな衝動にかわれたのかはわからないが、とにかく捜しに行ってしまった、
もう町につく頃だろうに少年の姿は確認できなかった。
まもなく広場につながる一本道だきっと又あの広場にいるに違いない、適当なところで馬を置き、
広場に向かった。
間違いなく、またあそこにいるだろう、少し、そわそわしながら、まるで、昨日市場で見て、
気になってる商品を買いに行くような・・・意識はしていなかったのだが、心のどこかで彼を雇おうと思っていたとおもう。
足早に広場に向かう。まだ朝市の余韻が残る中、ひたすら広場をめざした、
広場はいつもとなんら、様子が変わらない、彼がいない。
何人かの商人に聞いてみたが、今日は来てないし、途中で見かけてもいないという。

はっ!もしかしたら、逆の道を行ったのだろうか確かに山を越えると大きな町があるからきっと
そっちをめざしたのだろうか
そんなことを思った瞬間気がつくと、足早に馬を取りに向かっていた。

山を登られたらおしまいだがきっとまだ、そこまで着いていないだろう。
馬にまたがり、急いで山のふもとをめざした。

昼前には山のふもとに到着したもちろん、途中に彼の姿はなかった。
しかし、そんな早く、これる距離ではない、
茶屋のおばちゃんに聞いてみたが、そのような少年は見なかったという。

しかし、現実に彼はいなくなってるし、右か左のどちらかにしか、道はない。
まっいないものは、仕方がない。多分、どこかでやっかいになってるのかもしれないし。
それであれば、気にする事もない。
いや、私はそんなに心配しているわけではない。ただ単に惹かれているだけだ。

考えてもしょうがない、家に帰ろう。
帰りは行きと打って変わって、ゆっくり帰った。
 
もうお日様はだいぶ西の方に傾いてきてる。

そして、家に着く。
「お前も疲れただろう。ごめんな」
そう馬に話しかけると、馬に餌をあたえるため、離れに向かった。


離れから餌をとり、まず馬にそして犬や鳥にも餌を与える。
そして、豚や牛にも餌を与える。
今日は少し遅れてたため、やたら興奮してやがる。
私も軽い食事を取り、畑に向かう、さすがにこの広さの畑を一人でやるのはこたえる。
妻が居たときは他のことは全てやってくれたし、畑もかなり手伝ってもらっていた。
殆ど頼り切っていた。
彼女が家を出て二年くらいは殆ど何も出来なく、畑はあれ、家畜を売ったその金で食いつないでいた。

そして、再び立ち直れたのは家族のおかげだった。
二年前の私の誕生日に一枚のカードがポストの中に入っていた。

妻と子供たちが私に向けた手紙だった。

今、彼女たちは彼女の実家に居るということ。戻るつもりはないが、子供たちが私に会いたがっているということ。そしてそれを彼女は許可するということ。
子供たちの私に対する愛情いっぱいの言葉。
まだ、字もうまく書けない、ちびの会いたいという言葉。

涙が止まらなかった。人のやさしさにふれたのが久々だった。

次の日、私はペンを取り、手紙を綴った。

あのあと、怠惰な生活を送り続けたこと。少なからず、家族を恨んで居たこと。
酒に溺れていた事。とても、今、みんなに会う資格がないこと。
でも、どうしようもなく、会いに行きたい事。今すぐ、飛び出したい衝動にあること。
そして、今の自分を変え、全てをもとに戻して、初めて、みんなに会える資格があるということ。そして、今、またどうしようもないわがままを言っていることを許して欲しいという事。

次の日から私は変わった。あれから二年間、一日足りとも、約束を破っていない。
もちろん、家族からの手紙はそれっきり、こちらから伺う資格すらもない。

あれからもう二年か、一度手紙を出してみようか。

9/17
ボクは旅人、今歩きはじめたところ・・・
10/1
忘れ物を取りに戻るとつけっ放しのラジオから歌が流れてきた。

ボクは旅人、今歩き出したところ
あとどれくらいあとどれくらいあるいたのならば、
全てを取り戻せるのだろうか?

夢はいっさいがっさいそんなに囲まれても困るのに
あとどれほどのことをすれば、この場所から逃げ切れるのか

僕は歩くよ、走れはしない、足が不自由だからさ、
僕は旅人、そういうことが僕の一つの逃げ道だからさ・・・・














         




posted by ゴリ at 11:39| Comment(4) | TrackBack(0) | 突然のれんが | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする